がんを正しく知って、正しく理解する

がんになる人は年々増加し、現在は日本人の2人に1人はがんになる*といわれる時代です。また、診断や治療の進歩によって、がんは「すぐ命に関わる」という病気ではなくなってきたこともあり、多くの方にとって身近ともいえる病気になりました。しかし、実際にがんと診断された患者さんやご家族には、治療や副作用、お金や生活のことなど、多くの不安や疑問があります。「がんとともに生きる」ために、まずは、がんを正しく知って、正しく理解することが大切です。

*2017年 国⽴がん研究センター がん対策情報センターによる推計値

適切ながん情報の探し方
・不安や疑問の伝え方

  • まず、正しく知ること
    (病状・治療・療養 相談できるところ、ひと)
  • 正しく理解する
    (治療・生活上の工夫、効果の高い治療やケア)
  • 納得できるまで話し合う
    (話し合う、話し合える関係をつくる 安心で納得の医療へ)

信頼できる情報の見極め方

インターネットの普及もあり、世の中にはたくさんの情報があふれています。その中には、信頼できないものも少なくないため、がんを正しく知るためには、信頼できる情報を選ぶ眼が必要です。

信頼のできる情報は…

  • 情報源は信頼のできるものか
    • 施設からの情報/個人からの情報
  • 内容をチェックする
    • 話に矛盾がないか 良いことばかり書いてある
    • 特定の療法を勧める体験談に注意
    • 有名人、著名な学者の意見を鵜呑みにしない
    • 人を対象とした複数の研究に基づいているか
  • 刺激的な言葉に惑わされない
    • 完全消失!!、治癒率100%、末期がんからの生還
    • 奇跡の、今回限り!!あなただけ特別に!

科学的根拠(エビデンス)に基づいた信頼できる治療とは?

カリスマ医師が勧める「〇〇療法」と、「〇〇治療は無治療より有効(差がないとはいえない)」のどちらの情報が信頼できると思いますか?これを考えるときに参考になるお話をします。治療情報の科学的根拠(エビデンス)には重み付け、相撲でいう番付のようなものがあります。これを「エビデンスレベル」といいます。

横綱級は、試験薬を使った患者さんと、以前から治療に使用されている類似薬や偽薬(プラセボ)を使った患者さんの治療効果を比較した試験です。この結果は実際にこれから治療を受けようとする患者さんにもおそらく当てはまるだろうということで、エビデンスレベルが高い(根拠が強い)信頼できる情報になります。そして、カリスマ医師のコメントであっても個人的な見解は、エビデンスレベルが低い(根拠が弱い)とされます。

エビデンスレベルの高い情報は信頼できますが、比較試験を実施し有効性と安全性を検証するためには、膨大な時間やコスト、労力がかかってしまうのが難点です。

エビデンスレベル(例)

エビデンスレベル(例)
エビデンスレベル(例)

(帝京大学医学部 内科学講座 腫瘍内科 病院教授 渡邊 清高 先生 作成)

一般的な患者さんに推奨される、現時点で最良な「標準治療」

    標準には、「平均的である」、「並みである」という意味と、「判断のよりどころや行動の目安となるもの。基準」という2つの意味合いがありますが、標準治療の意味する「標準」は、「判断の目安となるもの」の意味があてはまります。

    標準治療とは、科学的根拠(エビデンス)に基づいて、一般的な患者さんに行うことが勧められる最良の治療をいいます。標準治療は「判断のよりどころ」だと考えて、自分に一番合った、ベストな治療を選んでいくことが重要です。

標準治療

標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる最良の治療であることが示され、ある状態の一般的な患者さんに行われることが推奨される治療をいいます。

(国立がん研究センター がん情報サービスより)

治療効果を客観的に評価する指標―5年生存率

-生存率と生存曲線

治療成績や治療効果の科学的根拠は、「生存率」で客観的に評価されます。「生存率」とは、「ある集団を診断/治療開始時期から追跡して、一定期間経過した時点で生存している人の割合(%)」のことで、がんでは5年生存率がひとつの参考となります。生存曲線は、経過時間を横軸に調査期間中の生存率の推移を示したものです。生存曲線では、どちらの治療法がよく効くかを比較したり、調査の条件が揃えば治療成績の格差を比較することができます。

生存率曲線で何が分かる?

  • 治療成績の比較
    • がんの比較(部位、年代別比較)
    • がんの因子での比較(病期、マーカー、遺伝子型など)
    • 患者因子での比較(年齢、性別、喫煙歴など)
    • 治療法の比較(どちらがよく効くか)
  • 施設間の比較
    • 条件が揃えば治療成績の格差の比較
      (治療だけでなく、診断法、予後調査の精度、年齢構成など 多くの影響を受ける)
生存率曲線で何が分かる?

(帝京大学医学部 内科学講座 腫瘍内科 病院教授 渡邊 清高 先生 作成)

-多発性骨髄腫の5年生存率

多発性骨髄腫の5年生存率については、2007年の報告(1993~1996年に診断された例)では25.0%、2013年の報告(2003~2005年に診断された例)では32.6%、そして最新の2019年の報告(2009~2011年に診断された例)では42.8%となっています。多発性骨髄腫は手ごわい病気ですが、10年前より現在治療中の患者さんのほうが、経過が良いだろうと期待されます。

地域がん登録における5年相対生存率(がんの統計’07、’13、’19)

多発性骨髄腫の5年生存率 多発性骨髄腫の5年生存率

(出典:公益財団法人 がん研究振興財団「がんの統計」)

-5年生存率を解釈する際の注意点

① 調査時の治療効果を反映し、最新治療の効果は含まれない

5年生存率を把握するために気を付けることは、5年間経過を観察する時間が必要だということです。2019年に公表されたデータは2009~2011年に診断された方についてのものですから、その当時の治療による効果が反映された結果といえます。多発性骨髄腫の治療法は、従来の化学療法、抗がん剤を使った治療から大きく進歩し、現在では、抗体医薬、免疫調整薬、分子標的薬など、新しい作用メカニズムで高い効果を発揮する薬剤や、副作用を軽減できるような治療法など、その選択肢も増えてきました。しかし、その効果が5年生存率に反映されるには、まだ時間がかかります。

② 1人1人の患者さんに当てはまらない場合もある

5年生存率は治療成績の目安にはなりますが、多発性骨髄腫と診断された多くの患者さんを集団として見た場合のデータのため、必ずしも1人1人の患者さんに当てはまらない場合があります。治療の内容や、骨髄腫以外の病気の有無などによっても影響がありますから、治療を選択する際には、少し解釈に注意する必要があります。

インターネットを使ったがんの情報収集

がんの情報収集の手段のひとつとしてインターネットがあげられます。がんに関連したサイトは数多くありますが、公的機関、がん診療連携拠点病院などの専門機関、がんに関する規模の大きな学会のサイトは信頼できる情報源といえます。

-がん情報サイトのご紹介